0122 創発−蟻・脳・都市・ソフトウェアの自己組織化ネットワーク
創発―蟻・脳・都市・ソフトウェアの自己組織化ネットワーク
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「創発」という言葉はもはや創発システムシンポジウムなど,私がよく行く学会でも,しばしば口に出すのが躊躇われる言葉である.
某学会の創発を関したセッションなど,殆どの発表で「創発」という言葉は使われない.
言葉が含むニュアンスが「凄すぎる」のだ.
一研究者はほとんどそんなレベルの研究成果には到達できない.
創発は創造や,創成,創出,発生などとは違う.
初学者はこのような点で,「何かが出来てくることが創発」と安直に考えがちだが,それは誤解だ.
創造+発生=>創発 ではない.
創発に近い概念に自己組織化があるが,その差を説明できるかどうかは多くの人にとって微妙かもしれない.
なんにせよ,サイエンスワードどしては苦しいことに創発の概念は定まりきっていないのだ.
しかし,ある程度共有された文献もあれば,多くの論述もある.
そのなかで,システム理論の研究者は結局のところその「凄さ」の構造を理解しきれていない,捉え切れていないのだ. その点については私も反省しきりなのだが〜
そのような背景にあって,この本の良さは,
おそれることなく「創発」という言葉を多用し例を挙げ, さらに文学的に説明を繰り広げる点であろう.
アマゾンでの評価は決して高くないのだが,僕的には悪くなかったなあと思う.
厳密さを求める科学者が書いた本だった,ここまで「創発」という言葉についてかけなかったんじゃないかな? (批判も怖いし.)
ただし,絶版みたいですね.